関節リウマチとは

関節リウマチのイメージ写真

関節リウマチは自己免疫疾患のひとつと考えられており、全身の関節に炎症が多発して痛みの症状を呈し、放置しておくと関節が破壊されてしまうという、非常に注意すべき病気です。当クリニックでは関節リウマチに関し、日本整形外科学会認定リウマチ医である院長が、患者様それぞれの症状や進行度合いを見ながら、患者様に寄り添った丁寧な診療を行ってまいります。

現在、関節リウマチの治療薬は大きく進歩しており、関節破壊が進まぬようコントロールしていくことが可能になっています。そのためには早期治療が非常に大切です。関節リウマチには様々な特徴的な症状がありますので、下記のような症状がみられた場合は、お早めにご受診ください。

  • 朝、起きた時に手足などの関節がこわばり、10分以上、長い場合は1時間以上、動かしにくいと感じる(特に手指の第二、第三関節(指の付け根)
  • 手や足の関節が複数個所腫れている
  • 手や足の関節が左右対称で腫れている
  • 足首が固まったようで動かちにくい
  • 歯ブラシが持ちにくく、うまく歯が磨けない
  • ボタンが外しにくくなったり、靴紐が結びづらくなったりした
  • 箸やハサミなどの道具がうまく使えない
  • ペットボトルやビンのふたが開けられない、また開けるときに痛みを感じる
  • ドアノブが回しにくいと感じる
  • 重いものを持つと手首が痛い
  • 階段を上り下りすると膝関節が痛い
  • 入浴すると体中が痛むことがある
  • 全身にだるさがあり、熱っぽさも感じるときがある
  • 体がずきずきと痛んで、夜眠れない など

関節リウマチでは、こわばり・痛み・疲労倦怠感の3つが代表的な症状です。
片方だけでなく左右対称に痛みが起こることも特徴です。さらに疲労倦怠感に加え、微熱、食欲不振などの全身症状も表れます。

原因

本来、自分の身体を外敵から守る免疫システムに異常をきたし、自分の体の一部であるものを、外敵と判断してしまい、それに対する抗体を作ることで炎症が引き起こされます。
この異常が関節で起こると、主に関節の「滑膜」という組織にリンパ系細胞が集まり、滑膜炎などの反応を起こします。
この滑膜は関節液を作るなど、関節をスムーズに動かすために非常に重要な役割を担っています。

滑膜の炎症が進行していくと、滑膜細胞の増殖(腫れ)し、関節液も増加していきます。
その結果、関節部分がブヨブヨとした感じになります。
さらに「破骨細胞」が活性化することで、関節の軟骨や骨が破壊されていきます。
そのため関節の変形が引き起されてしまいます。

検査・診断

関節リウマチでは原因などまだわかっていない部分も多く、他の疾患とも区別するため、複数の角度から検査を行っていきます。
まずは症状などを丁寧に問診させていただき、患部の視診や触診を行います、さらに血液検査や尿検査等を行い、全身で発生している炎症の状況を調べたり、X線検査や超音波検査等の画像検査で関節の状況を確認したりしていきます。

血液検査では、炎症反応(CRP、血沈)やリウマチ因子の有無に加え、抗CCP抗体を測定します。
抗CCP抗体は関節リウマチの滑膜に存在するCCPという抗原を排除しようと形成される自己抗体で、従来のリウマチ因子検査に比較し、より正確にリウマチの発症を予測できると考えられています。
血液検査は治療開始後も、薬の効果や副作用の有無を調べるために定期的に行っていきます。

こうした各種検査に加え、関節リウマチでは下記のような診断基準と照らし合わせて診断を行っていきます。
トータルで6点以上の場合、関節リウマチと診断されます。

炎症を起こしている関節の数

大関節(足・膝・肘・肩・股関節) 1ヵ所以下 0点
大関節(足・膝・肘・肩・股関節) 2~10ヵ所 1点
小関節(手および足の指、手首) 1~3ヵ所 2点
小関節(手および足の指、手首) 4~10ヵ所 3点
11関節以上(少なくても1つ以上の小関節を含む) 11ヵ所以上 5点

血液検査

リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体がどちらも陰性 0点
上記のどちらかが陽性で、基準値の3倍以下 2点
上記のどちらかが陽性で、基準値の3倍より大きい 3点

急性炎症反応

炎症を示すCRP値とESR(赤沈)値がともに正常 0点
炎症を示すCRP値またはESR(赤沈)値が異常 1点

滑膜炎の期間

6週間未満 0点
6週間以上 1点

関節リウマチ新分類基準(ACR/EULAR2010)より

治療

関節リウマチは完治の難しい疾患で、治療の方針としては、「病気の進行を止める」「痛みや腫れなどの症状を改善する」「関節の機能低下を防ぎ、低下した機能に関しては回復を図る」ということを目指していきます。
そのための治療としては、薬物治療やリハビリテーションがあり、患者様それぞれの状況に応じて目標を設定し、治療計画を立てていきます。

薬物療法

抗リウマチ薬(DMARDs)

免疫の働きを抑制することにより病気の進行を抑えるもので、効果が強い一方、副作用が比較的少ないことから長期の服用にも対応するものです。
メトトレキサート(リウマトレックス・メトレート)、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン、ブシラミン、タクロリムスなどがあります。

生物学的製剤(バイオ製剤)

炎症を引き起こすサイトカインであるIL-6(インターロイキン6)やTNF-α(腫瘍壊死因子α)を標的にして抑制するもので、関節リウマチの治療成績を飛躍的に向上させました。
点滴や注射にて投与するもので、エタネルセプト(エンブレル)・アダリムマブ(ヒュミラ)などがあります。

JAK阻害剤

サイトカインの伝達を担う酵素のひとつに、JAK(ヤヌスキナーゼ/Janus kinase)というものがあります。
JAK阻害剤はこのJAKの働きを抑えることにより、異常な免疫反応を制御するものです。
副作用として、帯状疱疹が起こりやすいことなどがあるため、使用には注意が必要です。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)製剤

炎症を抑える目的で使用します。
効果は強いものの、副作用として骨そしょう症や糖尿病を進行させる恐れがあるため、注意して使用する必要があります。

消炎鎮痛薬(NSAIDs/非ステロイド剤)

痛みを抑えることが期待できるもので、関節の腫れや痛みを和らげる働きがあります。

リハビリテーション

関節リウマチの治療では、身体の機能を低下させないことを目的に、リハビリテーションを併せて行うことも有効です。
理学療法によって筋力を保ち、作業療法によってスムーズに生活を送れることを目指します。
また様々な装具を使って痛みや関節の変形を抑える装具療法を行うこともあります。
ただし、炎症が強く出ているときに行うと関節破壊につながる危険性もありますので、必ず医師の指導のもとで行っていきます。